2011/03/28

KING LINES: 50 Classic Ski Descents of North America REVIEW

以前にも紹介したこちらの本ですが、何とコロラドのわがファミリーが送ってくれました!ありがとうございます!


内容は以前にも言ったように現代版WILD SNOWではございませんで、副題にある通り「A Visual Tribute to North America's Finest Ski Descents」で、Chris Davenport率いる3名のスキーマウンテニアが、Classicと称する50本のラインを北米で活躍する一線級のフォトグラファーたちのキレイな写真とともに紹介していくというだけに留まらない何かメッセージ性のある仕上がりになっており、それはまさにKING LINESとして歴史に残るものであったり、ヒューマンドラマが展開されていたり、それこそ未来の可能性がみえてくるラインであったりと、、、(同じChrisでもSharmaの「KING LINES」ではありません)


ラインのヴァリエーションもバフィン島からカナダBCやアラスカのクーロワール、フェイス、そしてニードルやスパインまでも網羅していてます!

個人的に何本か滑ったことのあるラインがあって感慨深いんですが、、、その50の中でいつくかため息のでるようなラインを紹介しましょう!

Polar Star Couloir (Baffin Island)

こちらは北緯70°超、バフィン島のMount Beluga (1247m) というピークの1200mに及ぶクーロワールで、2002年Andrew McLeanが初滑降しており、極寒悪天の中何とか攀じ登り滑り降りたらしいんですが、遠目に見たより遥かに長くデカかったらしいです、、、

左)Mount Superior South Face 右)Hypodermic Needle

こちらはどちらもWasatch ClassicのひとつでUtahの滑り手なら一度は滑っているはず!?(自分もむかし滑ったことありますが、コンディションが全てです)

 左)Cross Couloir 右)Silver Couloir

左は名峰Mount Holly CrossのCross Couloirで、コロラドロッキーの象徴でワレメマニアにはヨダレが止まらない一品といえるでしょう

右はFriscoに住むコロラドのファミリーの窓から見える、Buffalo Mountainの北面クーロワールで、重鎮Lou Dawson氏のお気に入りでもあります

The Skillet (Mount Moran)

ワイオミングからは当然GTもエントリーしていますが、こちらのMount Moran東壁のルート、初滑降はGT初滑降者Bill Briggsらによって68年に滑られています!うーん、Classic

Sickle Couloir (Horstmann Peak)

Idaho州のHorstmann Peakの北東面の肩から伸びる美しいクーロワールで、当然めったに滑られていません

Giant Steps Couloir (Mount Williamson)

こちらはCaliforniaの14erのひとつWilliamson北東壁ですが、写真ではわかりにくいかもしれませんが、右寄りのクーロワールでそれ自体1000mくらいあり、これでは見えていないけど、さらに下方まで滑り込めると2500mほどのビッグラインでございます

Split Couloir (Split Mountain)

名前のとおりSplit Couloirですが、Split Mountain東壁にある3本のクーロワールのうち一番美しきラインで、90年にあのGlen Plakeが初滑降しています


Terminal Cancer (Ruby Mountain)

出たぁぁぁぁ、ニードルの中のニードル!ネバダの山奥に聳える平均斜度37°、幅400cm以下の楽園!説明不要

Combatant Couloir (Mount Combatant)

BCのWaddington Rangeに聳える南面のクーロワールはBCでバリバリ滑り込んでるPatagoniaアンバサダー、J.D.Hareによって初滑降!上部は凍っていて狭〜いらしいです

Mount Robson North Face
(右の壁は78年Mugs Stump/Jim Logan初登のEmperor Faceで、2007年Steve House/Colin Hareyが新ルートを登攀)

この滑降を語らずして北米の滑降史は語れない!まさにマスターピース!

初滑降は95年ですから、16年前です、、、リピートされておりませぬ!!!フェイスだけで約1000mの平均斜度57°の超エクスポージャー!

Ptor SpricenieksTroy Jungenのペアで落とされましたが、わずか5時間で滑り去ったそうな、、、そんなBDアスリートのPtor氏はいまno bullshit, no avalanche control, no rulesで大好きなLa Graveに住んでいるそうです(ちなみにArtesonraju南東壁や、さらにマニアックなMt. Vancouver北西壁も滑っています)


かつてAKクライマーの間では神と称され、「Extreme Alpinism」でおなじみのMark Twightはこの滑降を踏まえ、「よくもクライマーのラインを潰してくれたな」と皮肉まじりに話していたそうです

Aemmer Couloir (Mount Temple)

こちらも刺激的なクーロワール(真ん中のリッジライン左のニードル)は初滑降は79年のカナディアンロッキースキー界の英雄Doug Wardで、この人はこの本ではあんまりフィーチャーされていないんですが、凄いんです

Mount Fay North Face(右の写真でいう真ん中の壁)

まず、スキーレーサー上がりでシャモニに在住していた頃からエクストリームスキーに目覚め、前出のRobson北壁は70年代からチャレンジしており、Mount TempleもAemmerの他にDolphin Couloir(54°のアイスフェイス!96年)やMount Fay(最大斜度62°)をはじめ数々の初滑降を成し遂げておりますし、何と言っても掟破りの急斜度と究極のICE FACE好きかつ、クーロワールは飽きたのでフェイススキーに傾倒したという悟りの境地!!!

Doug Ward氏に関して興味ある方はLou Dawsonが99年に行ったインタビューをどうぞ(英語)
Skyladder (Mount Andromeda)

 Mount Andromeda南西壁に築かれたライン(最大斜度約55°)はこれまたDoug Wardによって15年も待って氏曰くやっとコンディションが整いコンプリートされたというラインで、彼をもってしても前夜眠りにつく事ができなかったという!!!

Fifty Classic Climbs of North America

こちらの本は79年に刊行されたバイブルですが、いまだに斬新さは残っています

当時のクライミングラインは現代のスキーラインである事はMark Twightの話を出すまでもないですが、00年にMontanaのGlacier Peakで際どい滑降を味わい、数々の僻地スキーマウンテニアリングを実践している、Kristoffer Ericksonに言わせると、オブジェクティブになる壁は未滑降、あわよくば未登攀で、リモートであればある程良く、ラインは必ずロープを使うような急斜面、滑落の危険から下痢するくらいの緊張感が味わえなきゃダメさといっております、、、確かに!

Chugach BIG5のひとつPontoon Peak (AK)

個人的に「う〜ん」となってしまったのはスキーツアー、トラバース、ヘリドロップラインが同時に掲載されていた事でしょうかねぇぇぇ、、、たしかにこれらは素晴らしいラインで北米を代表するものですが、2011年現在のSTEEP SKI MOUNTAINEERINGとは一線を画するものだと思うので、、、大事な書物だけに、、、
Capitol Peak Publishingって、、、そのままっすね

最後にクーロワールもフェイスもこよなく愛するChirs Davenport自身の未来の話、、、K2そしてAlpamayo SW Faceだそうだが、本当にやりたい山は彼の心にしまってあるはずだ!

SW Face Alpamayo

まあ何はともあれ一家に一冊!

2 件のコメント:

  1. 王子の文章,ほんと面白い(というか,おもろい).
    私には,いつもチンプンカンプンなマニアな内容.
    なのに…つい読んで,ニヤニヤしちゃう….

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  2. ありがとうございます。でも、チンプンカンプンですか!?

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